2003年度フルブライト・アメリカ研究セミナー
イリノイ大学シカゴ校 レポート7
はじめに
この6週間は私の人生にとって最も中身の濃いものであったといっても過言ではない。本当によく学び、よく遊んだ日々であった。ここ数年、教師として現場の仕事に追われる毎日を過ごしていたが、外の大きな空気に触れ、再び「もっと学びたい」「もっと知りたい」という知識欲をふつふつと感じた。アメリカ政府の奨学金であるから、もっとアメリカの宣伝めいた講義が続くのかと危惧していたが、現状を批判的な観点から議論するという一貫した姿勢があり、すべてのプログラムにたいへん興味深く参加することができた。素晴らしい人達との出会いがあり、膨大な知識を得ることのできるこのプログラムを私は日本の全ての先生に勧めたい気持ちでいっぱいである。
1. 参加期間: 2003年6月20日〜2003年8月3日(6週間)
2. 研修地: イリノイ大学シカゴ校
シカゴは様々な人種が住む町であり、アメリカの文化や歴史について学びたいと考える者にとって、大変興味深い土地である。美術館や博物館も充実しており、夏には至る所で様々な催し物が繰り広げられる。一日6時間の授業と大量の課題をこなした上で、外に出かけるのには、相当の体力が必要であったが、シカゴでの一ヶ月は非常に刺激的なものであった。
3. 滞在先: イリノイ大学学生寮
4人で一つのフラットを共有し、生活した。キッチン、リビングルームは4人用、バス・トイレは2人用であったが、鍵のかかる個室が与えられ、プライベートスペースも十分確保できた。新設の寮であり、私達が初めての住人であったこともあり、すべての施設が真新しく、快適であった。寮の一階には10台程のパソコンが設置されており、インターネットを常時使用できる環境にある。
私は、マダガスカル人、ドイツ人、ロシア人とフラットを共有したが、料理を毎度交代で作ったり、夕食後、何時間もプライベートな事から政治についてまで話しあう中で、本当の家族のように仲良くなることができた。彼らと育んだ友情は、講義の中で得た知識以上に私にとって大切なものとなっている。
4. 参加者: 30名 (21ヶ国より参加)
参加者の多くは、文部省の高官や教科書執筆者等の要職に就いており、それぞれの国きってのスペシャリストと直接に話しあう貴重な機会を得ることができた。
本年度の参加者の出身国は次の通りであった。
バーレーン、ベルギー、ブラジル、カンボジア、中国、コンゴ、エルサルバドル、エストニア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、マダガスカル、マレーシア、マルタ、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スペイン、タンザニア、ベトナム、日本
5. 講義内容:
4週間のシカゴ滞在中、毎日約6時間の授業を受けた。授業はすべて大学院レベルのものであり、3人の教授陣(歴史、文学、法律の専門家)がティームティーチングを行うというぜいたくなものであった。参加者の英語力はネイティブスピーカー並であり、アメリカの歴史や文学に関する知識も豊富であったため、講義を受ける中で、自分の力不足を実感することが再々あった。また、毎日大量の読書課題(4週間で約30冊)が出されるので、課題をこなす時間を探すのがたいへんであった。主な授業の内容は次の通りである。
第一部: American Culture: Values, Belief, Artifacts and Acts
9月11日テロからイラク戦争、アメリカ政治哲学、アメリカの教育システム、アメリカの消費文化
第二部: United States Culture: A history of Intersections
国民アイデンティティ形成の模索、フレデリック・ダグラス、権利の拡張と闘争、個人と都市、ハックル・ベリー・フィン、アメリカの国際主義、アメリカの外交、大戦間の再統一、アメリカのフェミニスト理論、戦中・戦後・冷戦
第三部: Contemporary American Culture and the Global Future: Intersections, Confusions, Resolutions
人種のるつぼと文化の衝突、アフリカ系アメリカ人の文化におけるアイデンティティと人種問題、大衆文化、ネイティブアメリカン文学
授業の内容がフィールドワークとよく連結しており(シカゴダウンタウン歴史ツアー、消費文化のシンボルとしてのショッピングモール訪問、現地高等学校訪問等)、プログラムはとてもよく工夫されていた。
6. ツアー
最後の2週間はツアーであった。一日平均5時間バスに乗り、国道64号線をひた走った。バスの中では毎日教授の講義が用意され、インディアンの居住区や博物館を訪問し、講義とフィールドがうまく合致していた。主な滞在地は次の通りである。
ハンニバル→カンザス→オクラホマ・シティ→テキサス→アルバカーキ→デュランゴ→アリゾナ→ラスベガス→(航空便にて)ワシントンD.C.
おわりに
この貴重な体験を無駄にしないため、これからもここで出会った人達との絆を大切にしていくと共に、アメリカン・スタディを授業の中にどういかしていくかを具体化したいと考えている。
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