フルブライト交流事業

マーサ・メリット

2019年度 国際教育交流(IEA)プログラム
研修・視察団

大阪市立大学で “Empowering Women on Campus”(大学における女性の進出) について講義

No.40原文は英語です
結ばれた絆から深める相互理解――国際教育交流(IEA)プログラムの参加を経て

「どの訪問先でも、それはもうとても温かく丁重に歓迎いただきました」。2019年度国際教育交流(IEA)プログラム参加者として、マーサ・メリット博士は2週間の経験をそう振り返る。

University of Richmond で Office of International Education の Dean として、海外留学派遣や留学生受け入れ支援、教員研修の企画運営を担っている。加えて、30年近く研究を続けているロシア政治学の授業も受け持つ。研究において、日本はロシアの重要な隣国として含まれているので、これがきっかけで大学院生時代から日本文学や日本美術の「美」に惹かれ続けている。

日本の大学とはすでに2校と提携関係にあるものの、日本の高等教育改革についてさらに理解を深めたいと思っていた。「日本とは別の国に派遣された同僚たちを通じてこのIEAプログラムについて知りました。私が専門家として有意義な形で日本を訪問したいと常々思っていたことを、皆、知っていたので勧めてくれました」

来日後、メリット博士とその他9名の国際教育専門家たちは、東京、京都、広島で数々の多様な教育機関を訪問した。ある大学訪問においては「わざわざ複数の研究者をメンバーにした、素晴らしい委員会を組織くださいました。よく考えられて構成されたグループで、日本滞在中は、このメンバーと様々な共同プロジェクトについてやり取りをずっとしていました」。さらに「どの大学でも、留学生をできる限り温かくそしてスムーズに受け入れたいと思っているので、言語習得や異文化社会での生活といった大きな課題に直面している留学生への対応について意見交換しました。また、おそらくほとんどの大学で問題となっている、若者のメンタルヘルスについても語り合いました。この若者世代は、非常に強いストレスを感じているように思います」と続ける。大学職員間のコミュニケーションは特に重要だと強く信じている。学生や教員、職員が抱える問題や課題を理解し、意見交換できたことは、解決に繋がる方法や手段を共有する機会となった。

IEAプログラムの最も有益な特徴のひとつは、フルブライトのネットワークに加わり「数々の重要な問題や課題に取り組む素晴らしい研究者たちと出会うこと」と、強調する。将来のフルブライターへのアドバイスとして、交流を深めるには、質問をすることと耳を傾けることだと言う。「日常生活のたわいもないことについて質問をすることにより、多くの場合、質問の受け手は緊張がほぐれ、落ち着いた気持ちになります。質問者が日本や普段の生活について興味を持っているとわかるからです。面白いことに、私はこれまでよく、学生たちへ旅行先では騒ぐことなく現地や周囲の人々のふるまいをよく観察するように指導していたものでした」

帰国後も熱意や情熱は薄れずにいる。翌年の2020年5月には、日本について研究している教員一団とともに再来日する予定だった。このIEAプログラム期間中に出会った研究者とこの一団をつなぎたかったのである。しかし、新型コロナウイルスによるパンデミックのため延期せざるをえなかった。

「私の大学で少なくとも実現できたことは、昨年(2019年)11月に日本からゲスト2名を受け入れたことです。これを機に教職員の相互訪問が盛んになることを願っています」と笑顔で言う。「この先、日本を必ずや訪問し、交流の再開を心待ちにしています」


2019年度国際教育交流(IEA)プログラム参加者とともに明治大学にて


大阪市立大学にてレセプション