フルブライト交流事業

小澤智子

2020年度 研究員プログラム
所属先:Smithsonian Institution

人気のある写真撮影の場所です。

No.45
信頼され広がるフルブライターの輪――先輩から後輩へ、渡されていくバトン

フルブライト・プログラムに挑戦したきっかけは、大学院で出会った指導教官がこのプログラムの先輩だったことでした。「先生から留学中のエピソードを伺い、人生を変えるような経験ができるのだと感じました。フルブライターとして渡米することが目標になりました」。新型コロナウイルス感染症の影響で当初の予定よりも1年半遅れたが、2021年10月、その目標は達成された。

留学先の Smithsonian Institution で研究したのは、日本にある「米軍ハウス」(米軍関係者の住まい)をめぐる文化創造の歴史。研究機関に所属できたことで、多くの資料へのアクセス権に恵まれた。「アメリカの研究機関に所属していなければ閲覧できないオンライン資料が膨大にあるのです。せっかく得られた権限ですので、フル活用させていただきました」。フルブライターであることも研究の助けになった。「『フルブライターです』と自己紹介すると、『私もフルブライターでした』『知り合いがフルブライターです』と話が弾んで、どんどんご縁がつながっていきました。フルブライターだというだけで信頼される感覚がありました」

ワシントンD.C.での日常は国際色豊かなものだった。「さまざまな国籍の人がいて、自国以外に滞在した経験を持つ人も大勢いました。私より日本に詳しい人もいて、ベトナム出身の方に都内のベトナム料理店を教えてもらったことも。私も、一般のアメリカ人が知らないアメリカの歴史について話したりしました」。国籍にとらわれない交流を楽しんだ。

現在は、留学前から勤務していた日本の大学に戻っている。直近の目標は、留学中の研究内容を論文や書籍などの形にすることと、学生たちに留学の経験を伝え、バトンを次へと渡していくこと。「フルブライト・プログラムは、経済的にも社会的にもサポートしてもらえて、素晴らしい体験ができる機会。学生たちにもっと知ってもらいたいですね」。自身が指導教官の影響を受けたように、指導する学生の中からフルブライターの後輩が生まれるかもしれない。


ワシントンDCのナショナル・モール
Suzanne Brennan Firstenberg(social practice artist)によるインスタレーション “In America: Remember” の作品を撤去する作業にボランティアとして参加。白い旗は、コロナ感染症の死者を追悼するものである。

街中の「小さな無料図書館」。自由に本を入れても、取り出してもよい。

街の図書館が無料コロナ検査の拠点の一つとなっていた。